岩波新書
テレビ、ラジオでお馴染みの永さんの本です。
職人さんの道具で、差し金という寸法を測る直角になった物差しがありますが、見習いの若者にとって最初の壁が尺貫法です。
今はだいぶセンチで教えるようになりましたが、私が弟子の頃は尺で寸法を教えられました。
大工さんで言えば、「あいうえお」じゃなくて「いろはにほへと」ですね。
弟子の頃、いつも言われた言葉に
「手ぶらで歩くな」
「目上の人の前でタバコを吸うな」
「道具を見たら仕事がわかる」
「掃除が出来ない職人は仕事が出来ない」
いろんな事をやかましく言われましたが、今思うと当たり前の事ですが、若いうちはその意味がなかなか理解できません。
これから寒くなると現場で焚き火しますが、朝早く来て、火を熾して親方衆の来るのを待つのは弟子の仕事です。
夕方、兄弟子の鏝をきれいに洗い、掃除、片付けして最後に自分の道具をしまいます。
今、こういう事をいうと若い人は嫌いますが、自分もそうだったように後で解ってきます。
前回の小嶺先生の本にもありますが、寝食を一緒にしないと身につかないことが職人の世界にもたくさんあります。
今の建設業界は職人にとっては不景気の真っ只中ですが、昔から教わった教訓を永さんにあらためて教わり、勇気をもらった本でした。